愛を教えて

(10)魅惑のティータイム

卓巳がリビングに足を踏み入れたとき、そこは無人だった。


(ジェイクとソフィはどこに行ったんだ?)


疑問を覚えつつ、卓巳は窓際のデスクに近寄る。

そこにはオーク材で作られた、かなり幅の広い机があった。色は内装に合わせて軽めのライトブラウンだ。机の上に置かれた外線専用電話の受話器を手に取り、日本の国番号八一を押し、続けて電話番号を押した。

繋がるまでの間、卓巳は何気なくベッドルームに視線を向ける。



万里子を抱えてバスルームまで運んだ。そのまま一緒に入ろうとしたら、「卓巳さんのエッチ!」と追い出されてしまった。

今の彼女なら、必要以上に身体を傷つけるような真似はしないだろう。そう思いながらも心配でドアの外に立ち、万里子が出て来るのを待っていた。そんな卓巳に万里子は申し訳なさそうに笑った。

だが、「ごめんなさい」とは言わず、「大好き」と言ってくれた。

卓巳はご機嫌でシャワーを使ったが、例によって例の如く“烏の行水”だ。 


昨日までの万里子はかなり衰弱して見えた。

だが今は、少し痩せた感じはするが、すこぶる元気そうだ。昨夜ぐっすり眠ったのがよかったのかもしれない。或いは、やはり精神的なものが大きかったのだろう。

回復してすぐにお腹が空く辺りは、健康で若い証拠だった。


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