愛を教えて
「千早社長が激昂されています。万里子様がお戻りになったら、必ず実家に連れて帰る、と」

「それは、四年前のことが理由か?」

「はい。藤原邸を訪れた際にお耳に入ったようです。千早社長に詰問され、忍さんがすべてを話してしまわれまして……万里子様に関する噂があまりに酷かったせいですが」

「そうか――」


父親に知られたことを聞けば、万里子は傷つくに違いない。ようやく、元気を取り戻したばかりなのに。


「万里子とは別れない。太一郎にも伝えておいてくれ。万里子だけは譲らない、と」

「わかりました。よかったと思います。太一郎様も同じではないでしょうか。でも一週間は……せめて三日なら」

「五日だ」

「四日が限界です」

「わかった。では、四日後の最終便で帰国する。成田の到着は五日後の午後だ」

「了解しました。では、よいご旅行を」


帰国すれば色々忙しくなる。ライカーの件は万里子の傷を深くした。せめて皮膚の傷が癒え、嫌な記憶を楽しい思い出に塗り替えてやるまでは……。

父親のことを万里子に伝えるのは、帰国ギリギリにしよう、と卓巳は決めた。


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