愛を教えて
また、このカフェはアフタヌーンティのセットも人気だという。

予約待ちというリッツ・ロンドンのアフタヌーンティは楽しみ損ねた。だが、万里子にしてみれば、卓巳とふたりで過ごせるなら、たとえ公園のベンチで食べるサンドイッチでも最高だ。

食事は控えめにして、万里子たちもそのアフタヌーンティを注文した。


万里子はスコーンを皿に取り、ナイフとフォークで四つに切り分けた。

スコーンの横にはクロテッドクリームとイチゴジャムそれにレモンカスタードが添えてある。


「私はクロテッドクリームとイチゴジャムで。卓巳さんはどれがいいですか?」

「ああ……甘くないので」


万里子はクスクス笑い、「スコーンがほんのり甘いです」と答えながら、なるべく甘くなさそうなレモンカスタードをつけ、フォークに刺して卓巳に渡す。

ところが、卓巳は万里子が手にしたフォークから直接、レモンカスタード付きのスコーンをパクッと食べてしまう。


万里子は唖然とした。


「ごちそうさま。なんだったら、僕も食べさせて上げようか?」

「た、た、たく、たく……」


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