愛を教えて
「ああ、あのホテルは買収した。いや、正確には……ライカー社を買収したんだ」


夜、戻って来た卓巳にホテルのことを尋ねる。だが、その答えは万里子を更に驚かせるものだった。


ライカー社は今回の不祥事で資金源が断たれ、株価が暴落。そこを卓巳が出資する英国企業に買収させた。例のホテルのみ、卓巳が筆頭株主になったらしい。


「買収……ですか? では、サーは?」


万里子の質問に卓巳はフッと鼻で笑う。


「その呼び名も、あと数日で終わりだ。奴は伯爵の逆鱗に触れ、家を追われる。名目的には、一連の不祥事が理由にされるだろうがな」


卓巳が話したライカーの真実――なんと彼は子供が作れない身体だという。二十代前半で患った病気のせいらしい。

卓巳はライカーの言動からコンプレックスを感じ取り、調べさせた。そしてそれを、サマセット伯爵とネイサン・B・フォークナーに報告した。

それが事実なら、子供の父親として買われたライカーの存在価値はなくなる。そして、後継者として戻る場所さえなくなるのだ。


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