愛を教えて

(12)ハネムーン最後の夜

ちゃんと愛し合えるようになって卓巳は変わった。

異国の気安さもあるのだろう。卓巳は人前であっても、気軽に肩や腰に触れてくる。

更には、頬や髪に軽くキスするだけではなく、唇にまでキスしてくるのだ。

レストランやバーでは必ず隣に座り、ふとした拍子に万里子の脚に手を置く。万里子が卓巳を見上げると優しく微笑み、そのままキスへと……あとは無限ループだ。


こんな卓巳に万里子は戸惑いを感じ始める。

決して嫌な訳ではない。だが、その変化があまりにも急で、追いつけなかった。


歩き始めたばかりで、走り出そうとする卓巳。

一方で、ゆっくりと進みたい万里子。


ふたりの歩幅は少しずつズレが生じてしまった。ロンドンで過ごす最後の夜、ふたりはとうとう喧嘩をしてしまう。

それは、


「最後の夜くらい、何もせずにのんびり過ごしませんか?」


そんな万里子の言葉がきっかけだった。



「どうしてそんなことを言うんだ? 日本に帰れば忙しくなる。最後の夜なら心ゆくまで楽しみたい。欲望に溺れたセックスとは訳が違うんだ。愛を分け合う最高の行為を、わざわざ省く意味がわからない」


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