愛を教えて
「卓巳さん、お出かけですか?」

「あ、いや、そろそろ迎えに行こうかと思って」

「私がどこにいるか、ご存じだったんですね」


万里子の言葉の端々に、奇妙な違和感を覚える。
卓巳は息を飲むが、ここで怯む訳にはいかない。彼なりに必死で考えた答えを口にした。


「僕が悪かった。確かに……ずっと君をベッドに、いや、ベッド以外の場所にも縛り付けて申し訳なかった。反省している」


ただ、卓巳がどれほど万里子を愛しているか、精一杯示そうとした愛情だけは信じて欲しい。

卓巳は可哀相なほどうなだれていた。


「君の言うとおりにしたい。でも同じベッドで寝ることだけは認めてくれ。君の疑問にはなんでも答えるし、話し合いで解決して行きたい。もうダメだとか、これ以上無理といった言葉だけは言わないで欲しい」

譲歩と言うより、完全に白旗を揚げた敗北宣言だった。

万里子は卓巳の横をすり抜けると、部屋の中に入った。卓巳はそんな万里子のあとを追い、ひたすら説得に努めようとする。

そのとき、万里子は突然、卓巳に抱きついた。


「卓巳さんたら、もう、大好き!」


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