愛を教えて
ロンドンへ出発する直前、隆太郎の問いに万里子は答えることができなかった。

だが冷静になると、どう考えても卓巳の言い分は信じられない。

隆太郎は皐月に直接確認すべく、藤原邸を訪れる。


もちろん皐月は、万里子と太一郎の関係を否定した。万里子に頼まれたとおり、事件のことは一切口にせずに。

ただ、そんな皐月の口調には歯切れの悪い部分も出てしまう。


納得できぬまま邸をあとにしようとする隆太郎に、声をかけたのが……藤原邸を出ることが決まっていたメイド、永瀬あずさだった。



「卓巳様が、太一郎様と万里子様の密会をお知りになったんです。それで、太一郎様に酷い暴力を……」


卓巳の怒りを恐れ、万里子は太一郎にレイプされたと嘘をついた。その結果、太一郎が怒って、万里子の秘密を暴露してしまったのだ、と。

そして、あずさはその秘密を隆太郎に話してしまう。

万里子は卓巳を騙して結婚した。卓巳は身体の事情から万里子を妻にしたが、従弟との関係を知り離婚を決意したらしい、と。


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