愛を教えて
卓巳は姿勢を正し、深く頭を下げた。


藤原家が駄目なら千早家の世話になろうなんて、そんな情けない了見で認めてもらえるはずがない。

家を用意して、万里子の夫にふさわしい仕事を見つけてから、改めて、迎えに行くべきだ。


卓巳はそう決意した。


卓巳の誠実で堂々とした態度に、隆太郎の表情も変わった。


万里子の父に認められる男にならなければならない。強く、逞しく、隆太郎に代わって、万里子を守れる男でなければ。

卓巳が決意も新たに万里子の瞳を見たとき、彼女は静かに口を開いた。


「卓巳さん……私は、嫌です」


< 843 / 927 >

この作品をシェア

pagetop