愛を教えて
(5)障壁
火災警報器が鳴ったとき、万里子はシャワー中だった。
卓巳のことは信頼している。だが、彼も男だ。ふいに、どんな気分になるかわからない。万里子は万一のことを考え、ドアに鍵をかけてしまった。
ベルが鳴り響く中、万里子はとりあえず服を着ようとしたのだ。
卓巳の前に裸で出て行くことはできないし、したくない。
(どうしよう……時間はあるかしら?)
そんなことを考え、バスローブを羽織った瞬間、ドアをぶち破りそうな勢いで卓巳が叩きはじめた。
返事をするべきかどうか迷っていると、すべての電源が落ち、何も見えなくなった。
「大丈夫。大丈夫だ、僕がそばに居る」
卓巳はそう言いながら、万里子の身体に手を回し、優しく包み込んだ。
そのとき、卓巳の携帯が鳴った。
それはホテルの支配人からの電話で、コンピューターの誤作動……そんな言葉が万里子の耳にも入る。
そして、電話の最中に警報器は鳴り止んだ。
電気の復旧には少し時間がかかる。しばらくは非常電源のみ。卓巳は口に出して言うことで、万里子にも伝えようとしてくれていた。
卓巳は、事故が起こらないように館内放送を繰り返すことや、怪我人や病人が出ていないか、各階を廻って直接確認するように、と携帯を通じて指示している。
万里子はそんな卓巳の顔に見惚れていた。
卓巳の腕の中は安心できる。深い信頼を彼に寄せた。その思いは、万里子さえ認めれば、すぐにも愛に変わりそうだ。
卓巳のことは信頼している。だが、彼も男だ。ふいに、どんな気分になるかわからない。万里子は万一のことを考え、ドアに鍵をかけてしまった。
ベルが鳴り響く中、万里子はとりあえず服を着ようとしたのだ。
卓巳の前に裸で出て行くことはできないし、したくない。
(どうしよう……時間はあるかしら?)
そんなことを考え、バスローブを羽織った瞬間、ドアをぶち破りそうな勢いで卓巳が叩きはじめた。
返事をするべきかどうか迷っていると、すべての電源が落ち、何も見えなくなった。
「大丈夫。大丈夫だ、僕がそばに居る」
卓巳はそう言いながら、万里子の身体に手を回し、優しく包み込んだ。
そのとき、卓巳の携帯が鳴った。
それはホテルの支配人からの電話で、コンピューターの誤作動……そんな言葉が万里子の耳にも入る。
そして、電話の最中に警報器は鳴り止んだ。
電気の復旧には少し時間がかかる。しばらくは非常電源のみ。卓巳は口に出して言うことで、万里子にも伝えようとしてくれていた。
卓巳は、事故が起こらないように館内放送を繰り返すことや、怪我人や病人が出ていないか、各階を廻って直接確認するように、と携帯を通じて指示している。
万里子はそんな卓巳の顔に見惚れていた。
卓巳の腕の中は安心できる。深い信頼を彼に寄せた。その思いは、万里子さえ認めれば、すぐにも愛に変わりそうだ。