愛を教えて
「卓巳さんの役に立つためには、肩書きも必要だからね。大学はステイタスで決める。それに、ひとり暮らしも始めるつもりだよ。バイトもやる。社会経験も大事だって宗さんに教えてもらったんだ」


目を輝かせて母や姉の前で語った。



「三面六臂の大活躍だな、宗。お前の守護天使も勤労意欲に目覚めたのか?」


半ば本気で感心し、それでも茶化すように卓巳は言う。

だが、今度は宗も黙ってはいなかった。


「はい。どうやら社長と守護天使が入れ替わったようです」


わざとらしくニッコリと微笑む。


(こいつ、どこまで知ってるんだ?)


今度は卓巳が咳払いをしつつ、話を静香の件に戻した。


「で、静香は例の縁談で手を打ったのか?」


相手は造船会社の御曹司。会社の業績も安定しており、資産も申し分ない。静香がブランド品を買い漁ったところで傾くような会社ではなかった。

しかも、相手は静香の取り巻きのひとり。静香にベタ惚れだった。年齢が静香より一歳年下であること、そしてひとり息子だという点がネックだったが……。


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