愛を教えて
(3)罪なる秘密
卓巳は悲鳴を聞くなり駆け出した。
「宗、救急車だ!」
宗は言われる前に携帯を取り出し、すでにボタンを押している。
万里子がハッとして走り出したときには、すでにふたりの背中は見えなかった。
万里子が皐月の部屋に飛び込んだ瞬間、ベッドの上に横たわる皐月が目に入った。卓巳は土足のままベッドに乗り、皐月の胸元を開き心音と呼吸を確認している。
皐月は苦しがっている様子はない。すでにグッタリとして、意識はないようだ。紫色の唇に気づいたとき、万里子はふらつきドアにもたれかかった。
千代子は皐月に縋り、「大奥様ぁ!」と繰り返している。
そしてどういう訳か、部屋の隅に尚子が座り込んでいた。
「社長! 会長の様子を教えてくださいっ!」
宗が携帯を手に叫ぶ。宗の質問に卓巳は極めて硬質な声で答えた。
「脈拍、呼吸共になし。時間は――確認できるだけで二分」
邸内にいた全員が順番に駆けつけてきていた。卓巳の声に小さな悲鳴も上がる。
だが、千代子はそんなものでは済まない。人生の三分の二を共に過ごした、千代子にとって皐月は母親も同然だった。
「宗、救急車だ!」
宗は言われる前に携帯を取り出し、すでにボタンを押している。
万里子がハッとして走り出したときには、すでにふたりの背中は見えなかった。
万里子が皐月の部屋に飛び込んだ瞬間、ベッドの上に横たわる皐月が目に入った。卓巳は土足のままベッドに乗り、皐月の胸元を開き心音と呼吸を確認している。
皐月は苦しがっている様子はない。すでにグッタリとして、意識はないようだ。紫色の唇に気づいたとき、万里子はふらつきドアにもたれかかった。
千代子は皐月に縋り、「大奥様ぁ!」と繰り返している。
そしてどういう訳か、部屋の隅に尚子が座り込んでいた。
「社長! 会長の様子を教えてくださいっ!」
宗が携帯を手に叫ぶ。宗の質問に卓巳は極めて硬質な声で答えた。
「脈拍、呼吸共になし。時間は――確認できるだけで二分」
邸内にいた全員が順番に駆けつけてきていた。卓巳の声に小さな悲鳴も上がる。
だが、千代子はそんなものでは済まない。人生の三分の二を共に過ごした、千代子にとって皐月は母親も同然だった。