愛を教えて

(4)春立つ日

「本当に見舞って行かないのか?」


藤原邸を出て病院までの車中、卓巳は駅前で降りるという太一郎に問いかけた。

車は卓巳がプライベートで乗るBMW。だが、今日は運転手付きだ。昨年末、警察に逮捕された経緯を万里子に知られてしまい……。

万里子から免停中だけでなく、処分が決定する前も“運転禁止”を言い渡される。そんな卓巳は太一郎と一緒に後部座席に座っていた。


「ああ。助かったんだろ? だったら、見舞いは休みの日に行くよ。今からなら仕事に間に合うからさ。もし何かあったら連絡をくれ、夜中でもいいから」

「万里子には会って行かなくていいのか?」

「えらく余裕じゃねぇか。役立たずのソイツは、少しは使えるようになったのか?」

「――愚問だな」


太一郎の問いに卓巳はニヤリと笑う。


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