愛を教えて
「やっぱり、実家のお風呂はホッとするわ。ねえ、忍、お腹が空いたんだけれど、何か食べるものはある?」

「お、お嬢様」


突然里帰りして来た娘に驚きつつ……。

当初、父と忍は、犬も食わない夫婦喧嘩だろう、と苦笑していた。だが、妊娠の件を聞き、一瞬浮かんだ笑顔がすぐさま凍りつく。

万里子は卓巳との喧嘩の内容までは伝えず、母にお線香を上げ、しばらく母に話しかけた。


入浴を済ませ、忍の作ってくれた梅干し入りのおにぎりと味噌汁をキッチンカウンターで食べ終えると、「万里子、こっちに来て座りなさい」。

厳しい顔の父が待ち構えていた。


万里子はロング丈のニットガウンの前をしっかり合わせながら、ソファに父と向かい合って座る。


「藤原の家に電話をしたんだが、卓巳くんはいなかった」


父の言葉に万里子はドキッとする。

まさか、また車で出たのだろうか? だが、万里子が家を出たとき、宗が一緒にいた。来月には九十日間免許停止になるはずの卓巳に、無茶はさせないだろう。


「代わりに和田さんという女性が出て、詳しいことは話してくれないんだが、お前は悪くない、自分を庇ってくれた、と言っていた。――さて、今度のことで卓巳くんと何があったか、ちゃんと話してみなさい」


万里子は観念して口を開いた。


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