愛を教えて
「……私たちの子供なのよ。それを“数ミリの細胞”なんて“癌と同じ”なんてあんまりでしょう?」

「それはそうでございますが……」


父はともかく、忍は万里子と一緒になって怒ってくれると思っていた。それが、予想外の困惑した反応に、万里子は胸騒ぎを覚える。


「卓巳様のお言葉は、確かに殿方にありがちな無神経なものではありますが……。わたくしには間違っているとは思えません」

「し……のぶ」

「わたくしの夫は交通事故で亡くなりました。中学に上がったばかりの息子とふたり残され……悲しみに暮れました。残されたものは本当につろうございます。ましてや卓巳様のおばあ様はご高齢で、万が一のことがあれば……お気の毒どころではありません」


そんなことは言われなくとも万里子にもわかっている。

卓巳をひとりにしないために、皐月は孫に花嫁を望んだのだ。


「忍はわかってくれると思っていたわ。でも、忍には子供がいて、孫までいるんですものね。お母様なら……きっとお母様が生きていらしたら賛成してくださったはずよ」


万里子は横を向き、幼い少女のように拗ねて見せた。


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