愛を教えて
「では……おばあ様はご無事なんですね」


卓巳の話を聞き終え、万里子の瞳に涙が浮かんだ。


「ああ、意識が戻った。千代子も泣いて喜んでいた。医者も、絶対安静の状態は続くが当面の危機は去った、と」

「よかった。私もすぐに用意します。おばあ様のおそばに」


万里子は二階の部屋に戻ろうとした。だが、卓巳はそんな彼女の腕を掴み引き止める。

「あの、卓巳さ……」


いきなり抱き寄せられ、万里子は言葉を失った。


「ごめん。上手く言えない。でも、何もできない自分が悔しい。万里子、ひとりでは、いや、子供とふたりでは逝かないでくれ。そのときは、僕も一緒だと約束してくれ」


万里子は震える卓巳の背中に手を回し、ギュッと抱き締めた。


「大丈夫よ、卓巳さん。同じ約束なら、みんなで生きて幸せになる約束をしましょう。だって、卓巳さんの愛が私に教えてくれたのよ。奇跡は精一杯手を伸ばして、懸命に掴むものだって」


雨はいつの間にか、雪に変わっていた。

その下で、大地は春の鼓動を始める。


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