愛を教えて
卓巳は途中で店の従業員を呼び、


「これはいくらだ?」

「あ、いえ、お売りするという訳には……」

「なら機械ごと買おう。不満なら店ごとでも」


と言い、小切手を切ろうとして、慌てて万里子に止められた。


最終的に五千円ほどつぎ込み、ようやく卓巳は一個のぬいぐるみを取った。

あまり可愛らしい色とは言い難い、茶色いアザラシが赤いハートにくっ付いている。


「まったく。似たようなものはどこにでも売ってるだろうに。縫製も雑で、とても商品価値なんか……」


小声で不満を漏らす卓巳の耳に、万里子の安堵した声が聞こえた。


「嬉しい……卓巳さんが取ってくれたら、きっと赤ちゃんが抱けるって神様にお祈りしてたの。もしダメでも、私、一生この子を大切にするわ。……ありがとう」


万里子は一層の尊敬と信頼のまなざしで卓巳を見つめる。

そんな彼女の肩を抱きながら、諦めなくてよかった、と卓巳は心の底から思った。


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