愛を教えて
「万里子! 無事に終わったかい?」


今日の車は社用のリムジンだ。

やはり待ち切れず、卓巳は外で立っていたらしい。今、万里子を呼ぶ声はたとえようもないほど温かく、愛が満ち溢れている。


「車の中で待っていてくださればよろしいのに。寒くありませんでした?」

二月の後半はコートなしで出歩けたが、三月に入って再び寒気がやってきた。


「僕はどうでもいいんだ。聖堂は寒かったんじゃないのか?」

「大丈夫です。千代子さんにもらった、腰巻きのような腹巻きを着けてますから」

「このまま病院に行くだろう? 気分は?」

「酷いのは朝だけですから、本当にそんなに心配しないで」


薄手のアカデミックガウンを脱がせると、卓巳は万里子を厚手のコートで包み込む。

今日は通算四度目の検診日だった。



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