愛を教えて
その代わりにと、卓巳は『質より量』の本領を発揮して、日本中から安産のお守りを掻き集めたのだ。


『お守り記念館とか、博物館とか、お作りになるつもりなんでしょうか?』


雪音が呆れるのも無理はない。私室のリビングにある暖炉の上に、お守りが山盛りになっていた。

しかも、行ける範囲では卓巳が自ら出向き、祈祷を受けた腹帯までもらってくる。


『卓巳さん……それは五ヶ月目の戌の日に行くのが習わしなんですけど』


開いた口の塞がらない万里子に、卓巳は平然と答えた。


『そのときはそのとき、また行けばいいだろう。神も仏もしつこく願えば根負けして優先してくれるかもしれない』

『でも、あまりしつこいと怒らせたりしませんか?』


お詫びに回ってくるという卓巳を、慌てて引き止める万里子だった。


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