愛を教えて
「では、この一ヶ月、順調に成長しているんだな?」


四度目の検診を終え、診察室には卓巳も入ってきていた。

CRL――頭臀長《とうでんちょう》を計る担当医に卓巳は念押ししている。


「はい、心音に問題はありませんし、二週間前に比べしっかり大きくなってますからね」


答えながら、担当医は妊娠週数を十二週から十週に修正した。同時に出産予定日も十月半ばにずれたと告げられる。


万里子はモニターを食い入るように見ていた。

そこにふたりの子供がいる。ちゃんと人の形をしており、手も足も動いていた。自分の中に戻ってきた命を感じ、万里子は感謝の気持ちで一杯だった。



「ええ、心配はしていませんでしたよ。教えてあげたではありませんか。卓巳さんによく似た男の子が、わたくしの手を引いてくれたのよ」


検診のあと、報告に訪れた特別病室で皐月はころころと笑った。  


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