愛を教えて
「ああ、なるほど。これは確かに、僕の息子にふさわしい立派なモノだな」

「……喜んでくれる?」

「そうだな――結人、大樹、光希! お前たちに弟が増えるぞ!」


桜の下で駆け回る息子たちに、卓巳は大きな声で叫んだ。すると、父親に負けないくらいの歓声が子供たちからも上がる。  


その瞬間、卓巳は万里子を横抱きにして立ち上がった。


「きゃっ! もう、卓巳さんたら」


まだ枝の低い桜を避けて、卓巳は芝生に向かって駆けて行く。子供たちも一緒になって両親を追いかけた。



春も夏も秋も冬も、いくつもの季節と共に愛を重ね――。

出会いと別れ、喜びと悲しみ、どんなときも手を伸ばすとそこにお互いがいた。


息子たちに、そして、いつか生まれる娘に、与え得る限りの愛を注ぎ込もう。


それはふたりの命を懸けた願いだ。



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