ガルドラ龍神伝―闇龍編―
『親愛なるリタ姫へ――


手紙に書いてあった、≪帰省祝い≫の件は了解した。


私もジオも、お前と会える時を楽しみにしている。


さて、話は変わるが、こんな伝説をお前も一度は聞いたことがあると思う。


が、今後何かの役に立つかもしれないので、この手紙に記しておいた。


是非、参考にしてほしい。――


千五百年前、この≪ガルドラ≫という魔界は、闇龍アルエスの魔力による襲撃を受けた。


各一族の族長や王達は、十人の代表者達をその龍と戦わせ、強固に封印させた。


その代表者達の名は――


砂龍族のデュラック、水龍族のアークレイ、火龍族のバイル、葉龍族のルナ、氷龍族のガトラ、岩龍族のシトラル、風龍族のルニス、華龍族のセルラン、雷龍族のハンス、金龍族のレグルスなり。


闇龍封印に成功した時には、既に彼らは息絶えてしまっていた。


が、この魔界を守るために、彼らは龍神に姿を変えたという。


この伝説をこの魔界の龍魔族達は、≪ガルドラ龍神伝≫と呼ぶ。


――父より』



『我が友ヨゼフへ――


手紙を送ってくれてありがとう。


君達が、冷酷な領主キア(族長の話によれば、彼はこんな性格だと聞いた)が支配してるレザンドニウム領国から脱出することに成功したということが、僕にとっても、他の水龍達にとっても、最も嬉しい。


いつでも良いから、一度アヌテラに戻って来てほしい(寂しいから)。


――スーラルより』


(スーラル……。やっぱり九年経った今でも、僕のことを心配してくれてるんだ)


ヨゼフは幼い頃に生き別れた友人スーラルからの手紙を読みながら、微量の涙を流していた。


それはリタも同じだった。
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