ガルドラ龍神伝―闇龍編―
一方、リタ達はデラル島から南に三十キロ離れた島国≪ポラテルド≫に行く船に乗り、次の目的地がどういう所かを、ヨゼフが持参している本と照らし合わせて確認していた。


ポラテルド。――


そこは他の属性の龍一族の住処と違い、厚く冷たい氷に囲まれ、永遠に厳しい寒さが続く雪国のような島国。


そこには≪氷龍族≫と呼ばれる氷属性の龍族が暮らしていて、彼らは皆、大公の称号を持つ魔族を慕っている。


「この船で後四分もすれば、ポラテルドに着くんだね。


それにしても、頭が痛い……。


おまけに、体が重いし」


ヨゼフはがんがんと痛む頭を押さえながら、リタ達に今の症状を訴えた。


「大丈夫? とりあえず、熱を計ってみよう」


そう言ってリタは、ヨゼフの額に手を当てる。


すると、彼の体がかなり熱くなっていた。


「ヨゼフ、君はどうも風邪を引いてしまったみたいだね。


どうしようか……。


神殿の場所を突き止める前に、一泊しなきゃ」


「それは駄目だ!」


「どうして駄目なのよ?


仲間が体調不良を訴えてるのに、置いてきぼりにはできないわ」


ナンシーは、続けて言おうとした。


が、リタはナンシーが言い過ぎてはいけないと思い、彼女を制止した。


「ナンシーの言う通りだよ。


どこか、泊まれる場所を探さなきゃ。


とにかく、無理は禁物だよ」


リタはヨゼフに、≪耐氷属性マント≫という、青と水色のマーブル模様が入っているマントを着せた。


このマントは防寒着のように、どんな寒さでも耐えることができる物だ。


火の属性を持つ火龍族の魔族達には、不要な物ではあるが。


リタが≪耐氷属性マント≫を着た時、船はポラテルド公国付近に着いた。


だが、ここからは三キロも歩かなくてはならない。


今にも倒れそうなヨゼフを背負い、ナンシーはゆっくりと船から降りる。


「ナンシー、大丈夫かい? 僕の風邪が、移ったりしないか?」


「大丈夫よ。私達火龍族は、風邪を引いたり移されたりしない特色があるわ。気兼ねしないで」


ナンシーは、幼い子供をおんぶしているような体勢でリタの近くに来た。


リタは先を急ごうよ、と言いたげに人差し指で乗船場から北の方角を指して、合図した。
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