ガルドラ龍神伝―闇龍編―
2


氷の属性というだけあって、床も壁も天井も全て、氷でできている。


その氷点下にも近い気温の中、リタとナンシーは地図を頼りに冒険している。


「寒い。身も心も、凍りつきそうだ」


「情けないことを言わないで。


旅立ちの前夜に、あの城で魔道族と戦うために修行をすると言ったのは、リタ、あなたでしょう?」


「それは……そうだけどさ……」


リタにしては珍しく、暗い表情をしている。


ナンシーは、今自分にできることを真剣に考えていた。


(どうしよう……。


リタは完全に、迷ってしまってる。


こんな彼女は、初めて見たわ。


なんて言ったら良いのよ)


ふと、ナンシーはあることに気づいたのか、試しにリタに訪ねる。


「リタ。あなたはもしかして、ヨゼフがいないから、そうやって落ち込んでるんでしょう?」


「え? なんでそう言えるの?」


「だって、普通に考えてみなさいよ。


いつものあなたなら、『寒さが何さ。こんな所で立ち止まってる暇なんてない』って言うわ。


それなのに、今はヨゼフがいない状態で、どうすれば良いかわからない。


そうじゃない?」


ナンシーはリタに、考えに考えた末の意見を言った。


(確かにナンシーの言う通りだ。


ヨゼフは度重なる疲労のせいで、風邪を引いて寝込んでる。


今、私達がやるべきこと。――一つ目は、ヨゼフの分まで頑張ること。


二つ目は、ルース大公の息子、アイル公子を捜し、そのうえで氷龍戦士の情報を聞き出すことだ。


私は大切な何かを忘れてた)


リタは目的を思い出し、先程の暗かった表情が嘘のように消え、いつもの明るい表情に戻っている。


その様子を見てナンシーは、安堵の胸を撫で下ろす。


二人は神殿の中央部にあたる部屋に出た。


その部屋の天井には、神殿内の動力部と思わしきクリスタルが吊り下がっている。


床の方は一見すると、足場が消えていて、到底渡れるはずがないと思われる。


が、実際は天井のクリスタルが放つ光が足場を照らし出している。


その光はまるで、リタとナンシーを神殿の奥まで導いてくれているかのようだ。


「どうする? ちょっと渡りづらいけど」


「決まってるじゃないか。


マイペースで進んでいくのさ。


もしかしたら、アイル公子もあの扉の奥の部屋にいるかもしれないし」


「そうね。少しでも可能性が残ってるなら、それを信じて進まなきゃ」
< 105 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop