ガルドラ龍神伝―闇龍編―
4


これまでのドライな性格とは一変して、今日のメアリーは、妙に戸惑ったり考え事をしたりを繰り返している。


(一体、彼女とキアとの間に、何が起きたというのだろうか?)


そのような疑問を浮かべながら、リタ達はメアリーの話を聴く。


彼女の話によれば、九年前にレザンドニウム領国の城の地下から、≪ブラッド・クリスタル≫という、大きく血のように赤い宝石が見つかったという。


見つけた途端、それが急に壊れ、中から赤と黒が混ざったような配色の影が現れた。


やがてそれは、そこにいたキア領主を包み、今に至るということらしい。


「なるほど。


でも、そんなことを知ってるのなら、なんで今まで私達に教えてくれなかったんだい?」


「それが……。


私自身も知らなかったのよ。


いつも近くでお仕えしてるのに……。


≪影≫と呼ばれる存在の人物に取り憑かれ、あんな風になってるということも。


そもそも、その≪影≫の正体が何なのか、未だに謎なのよ」


「その正体不明な奴に取り憑かれたキアに、今まで従ってきたのね。あなたも大変ね、メアリー」


ナンシーは、敵に同情するように言った。


一度話すとメアリーはまた、俯いたまましばらく沈黙する。


だが、彼女は勇気を持って、三人に自分がこれからしたいと思うことを話す。


「私は今までキア様――いえ、キアに従ってきたけど、これからはあなた達のために闇龍のことや≪ガルドラ龍神伝≫の真実を調べることにするわ」


「つまり、それは私達に協力するってこと?」


リタに聞かれ、メアリーは首を縦に振る。


それでも三人は、まだ完全に彼女を信用できなかった。


長期に渡って悪い領主に従ってきた女性から、いきなり色々な話を聴かされ、動揺しているのかもしれない。


(メアリーはいまいち信用できないね。でも、彼女が言ってることは、否定できない)


リタは、奴隷部屋から出る前のことを思い出した。
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