ガルドラ龍神伝―闇龍編―
(確かあの時、ある魔道師が言ってた。


キアは九年前は凄く優しくて、今のように魔道師達を扱き使うこともなかったと。


もしそれを本当のことと置き換えれば、メアリーが言ってることの辻褄が合う)


リタは先程聞いた話と過去に聞いた話を繋げ、この魔界の現状を整理してみた。


リタが考えているうちに、メアリーは去っていった。


「ちょっと待ってよ! もう少し、話を聴かせてよ」


そう言い切った時には、既にメアリーは霧状の冷気に包まれていた。


「残念だな。もう少しで、本当のことがわかるところだったのに」


「まあ、良いじゃないの。


事実を確かめられるチャンスは、他にもあるわ。


それに、ここに来た本当の目的は、アイル公子を見つけることなんだからね」


「そうだね。


結局、龍戦士は見つからなかったけど。


でも、せめて氷龍神に挨拶とお詫びをしてから帰ろうよ。


少し荒らしちゃったし」


リタの意見に、他の二人は賛成した。


三人は氷龍神像の前まで来て手を合わせ、氷龍神を拝む。


(氷龍神ガトラ。


この度はあなたの神殿を荒らしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。


ですが、これには事情があったのです。


どうか、お許しを……)


リタ達は、それぞれの想いを込めて氷龍神に祈りを捧げる。


その想いが通じたのか、共鳴するように石像とアイルが持っている鎖が、水色の光で繋がった。


石像は意志があるかのように、氷龍神の声でリタ達に語りかける。


『お前はアイル公子だな?


待ってたよ、僕の武器を託す時が来ることを。


デュラック王子とバイルも一緒か。


久しぶりだな、二人とも』


氷龍神らしき声を聞いた途端にこのようなことを言われ、アイルは混乱している。
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