ガルドラ龍神伝―闇龍編―
「大公殿下、リタ姫様達が無事に地下神殿から帰還した模様です」


兵士の一人が、大公に報告しに来た。


大公も公妃もこの報告には納得しているのか、リタ達を中にいれるよう命じた。


リタ達は兵士の指示に従い、中に入れてもらった。


五人が大公達の所に来た時、心配していた大公と公妃が笑顔を取り戻す。


「リタ姫よ、息子を助けて頂き、感謝する。


フラッペ、お前もアイルに生意気なことばかり言わず、リタ姫達に礼を言いなさい」


(なぜ、おっちょこちょいな兄が助けられたくらいで、私達が礼を言わなきゃいけないの?)


そのようなことを思いつつ、フラッペ公女は三人に頭を下げる。


ヨゼフは首を横に振った。


「いやいや、僕は何もしてないよ。


風邪引いて寝込んでた訳だし。


むしろ、お礼を言うのは僕の方だ」


「いいえ。ヨゼフ殿にも、お礼を申し上げたいことがあります。


私とお話しして下さって、ありがとうございました」


フラッペはヨゼフに礼を言い、次にリタ達に礼を言った。


「リタ姫様、ナンシー殿。お兄様を助けて頂き、ありがとうございました」


フラッペに礼を言われ、リタもナンシーも顔を赤らめる。


ふとリタは、アイルが龍戦士になったことやメアリーに操られていたことなどを思い出したので、大公達に報告した。


「大公殿下、地下神殿での出来事についてですが……」


その報告を聞いた時の大公の顔は、半ば動揺しているようにも見える。


「なるほど。


魔道師がそのような力を……。


どうりで、アイルが一ヶ月も消息を絶っていた訳だ。


このことについては、私達も調べておく。


しかし、もっと驚いたのは、アイルが氷龍神の力を受け継ぐ龍戦士だったことだ。


しかも、神殿に巣くう魔物を全滅させたとは……」


アイルの意外な活躍に関しては、ルース大公は相当驚いている。


「ありがとうございます。それでは、私達はこれで失礼します。船の時間もありますので」


「またお会いする日まで」


挨拶を済ませ、三人は玉座の間を出る。


(さようなら、アイル。龍戦士が揃った時には、手紙を送るからね)


アイル公子に対する想いを募らせながら、リタは他の二人と一緒に氷龍城を後にして、ポラテルド島の南にある乗船場に向かう。
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