ガルドラ龍神伝―闇龍編―
(でも、本当はルッカス族長もリアスも、神殿についてはほとんど把握してると思うの。


でなければ、こんな風に私達を易々と呼んだりしない)


ナンシーは、もしかしてリアス達が隠し事をしているのではないかと、疑わずにはいられなかった。


「ナンシー、どうしたの?」


深刻そうな顔をして考えているナンシーを心配して、リタが訪ねた。


そんな彼女のことを気にせず、ナンシーは自分が思っていることを素直に言う。


「ルッカス族長、本当は私達に、隠し事をしていませんか?」


「ナンシー、そんなことを言ったら失礼だよ。もっと、言葉を選ぼうよ」


頭ごなしに物を言うナンシーを、リタは止めようとする。


だが、彼女は聞かなかった。


「どうなのですか、族長?


もし、何か隠していると言うのなら、私達にだけでもこっそりと教えてくれても良いはずです」


(相変わらず強引だな、ナンシーは)


ルッカス族長を説得しようとするナンシーを見て、リタ達は思った。


だが、ナンシーの意見を聞き、族長は口を開く。


自分が隠していたことを、告白する覚悟ができたのだろう。


「ナンシー……。


君の言う通り、私は族長の義務として神殿のことは、九年間伏せてたのだ。


魔道族の奴らと敵対中ということもあり、キア及びその部下達に知られてはまずいと思ってのことだ」


族長の話を聴いた後、リタはこれまでに神殿内で起きた出来事を踏まえ、話す。


「ですが、その秘密は既にばれつつあります。


なぜなら、キアの配下達が各自で情報を集め、各地の神殿を徘徊しているからです。


なので、せめて私達に場所を教えてくれるだけでも良いので、話して頂きたいのです」


この街の住人達を守りたいがために、むやみに情報を与えずにいた族長だったが、リタの説得により考えを改める。


今の状況を打開する策があるとすれば、今日の客であるリタ姫達を神殿に導き、龍戦士捜しに協力してあげることくらいだ。


ルッカス族長は酷く悩んだ結果、リタ達を神殿に行かせることにした。


その代わりに彼は、リアスと同行することを条件とした。
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