ガルドラ龍神伝―闇龍編―
赤い鬣をした少女は、三人の気配を感じて振り向く。


「あら、あなた達。


さっき、あたしの踊りを見てたわね」


「ああ、君の踊りはとても良かったよ。


私は砂龍族のリタ。


そしてこの二人は、私の友達の水龍族のヨゼフと火龍族のナンシー」


「あたしは風龍族のビオラ。よろしくね」


ビオラという少女は、笑顔でリタ達に自己紹介をした。


ふとリタは、先程の観衆の言葉が気になり、ビオラに質問した。


「ところで、さっき君は風龍族の人達から、≪ビオラお嬢様≫って呼ばれてたけど……。


あれは、どういうこと?」


この質問にも、ビオラは戸惑わなかった。


むしろ彼女はまた、笑顔でリタの質問に答える。


「ああ、あれのこと?


あれはね、あたしが風龍族族長の娘って意味なの」


ビオラが意外にも自分の秘密を簡単に言ったので、ヨゼフとナンシーは驚いた。


一方で、リタは普通の反応をしている。


(そうか。リタはフィブラス王女だから、そんなのは別に驚くことじゃないよね)


ナンシーは、リタがフィブラス国王の娘であることを知っているので、驚いてしまったことに困惑した。


ビオラは、あたしの家においで、と言いたげに腕で合図した。


三人はビオラの案内で、風龍族族長の屋敷を訪れることになった。


「ただいま」


ビオラは召使いらしき女性に、挨拶した。


「お帰りなさいませ、ビオラ様。


エアロビ族長が、丁度あなたを捜していたそうですよ」


「え、ママがあたしを?」


ビオラの言う≪ママ≫とは、おそらく族長にあたる魔族のことだろう、とリタは思った。
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