ガルドラ龍神伝―闇龍編―
他種族の神々が見守るなか、リタ達は神殿の中に入っていった。


中の雰囲気は、リタにとって、以前三人だけで冒険した水龍神アークレイの神殿を彷彿させる。


ビオラは未だに、不安を募らせるばかりだった。


「あんたって、本当に心配性なんだね。そんなんじゃあ、身がもたないよ」


ヨゼフは、ビオラをからかった。


ビオラは、拳を堅く握る。


その拳からは、ヨゼフの生意気さに対する怒りが込み上げてきた。


リタは、必死に彼女を制止した。


「まあ、落ち着きなよ。ヨゼフは、ああいう子なのさ」


リタが止めたためか、ビオラは我慢した。


自分はなんて臆病な魔族なんだろう。


こんなあたしを、ママはどう思っているのだろう。


ビオラは、しばらく考え事をしていた。


しばらく行くと、涼しい風が吹いている場所に出た。


ビオラの様子に気づいたのか、ナンシーは彼女に話しかける。


「ビオラ、大丈夫?」


ナンシーの表情を見て、ビオラは作り笑いで誤魔化す。


「だ、大丈夫よ。魔法は少ししか使えないけど、戦えるわ」


(意味を取り違えてるけど、とりあえずは大丈夫そうね)


そう思うとナンシーは、ほっとした。


四人は、風龍女神の祭壇を目指している。


だが、爽やかな風が吹く方向にはビオラが言った通り、大穴が空いている。


誰も歩いては渡れそうにないほど空いている大穴だったが、ヨゼフは四人分もあるロープを取り出した。


「ヨゼフ、いつの間に、そんな長いロープを……」


「これは、家から持ってきた奴だよ」


そう言いながらヨゼフは、大穴の向こうにある四角いブロックに向かって、ロープを投げた。


ロープはブロックに引っ掛かり、四人が渡れるようになった。


「助かったわ。あたしの場合、ちょっとの飛行はできるけど、あのブロックの所に行くまでは飛べないから」
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