ガルドラ龍神伝―闇龍編―
2


石像の下から出てきた階段を利用して、リタ達は神殿の地下室に入った。


そこは地下室というわりにはやけに明るく、カビ臭くもなかった。


「比較的涼しい所だな。本当に、ここが神殿の地下室なのかな?」


「さあ。でも、風龍女神ルニスの神殿というくらいだから、こういう感じでも不思議じゃないよね」


四人は多少の疑問が残っているが、進まずにはいられなかった。


扉を開けると、そこは地下室とは到底思えないほど綺麗な場所だった。


それはまるで、一つの楽園があるかのようだった。


神秘的な場所ともいえるこの部屋に、侵入者がいるとは想像もできない。


リタが和んでいた時、彼女達の後を追ってきたように、空色の服を着た男性が部屋にはいってきた。


彼の気配を察知して、四人は後ろを振り向く。


「風龍女神の生まれ変わりである、風龍族の族長令嬢など、キア様にとって邪魔な存在なのだ。


それと、そこの砂龍王女もな」


男性は、微笑を浮かべて言った。


その微笑は半ばリタ達を見下し、余裕をかましているように見える。


「何だよ、その妙に余裕ぶった態度は!」


ヨゼフは、感情を剥き出しにした。


リタ達よりも龍神達のことや≪ガルドラ龍神伝≫のことを知っているかのように、風系魔道師は四人を挑発する。


「いきなり入ってきて挨拶もしないなんて、ルニス女神の罰が当たるよ」


「ふ……。


流石は砂龍王女というだけあって、礼儀は弁えてるんだな。


俺はフィール。


風を操る魔道師さ」


ここに来たということは、また戦いの合図なのかもしれない。


そう思い、三人は武器を構える。


だが、フィールはそんなつもりはないと言いたげに、リタ達を制止した。


「俺がこの神殿に入った目的が、何かわかるか?」


フィールは意地の悪い言い方をして、四人に問う。


「……」


「どうやら、わからないようだな。


俺は、真実を語りに来たんだよ。


前から偽りだけで龍魔族達に語られてきた、≪ガルドラ龍神伝≫の真実をな」


フィールは偉そうに言った。


フィールが語りたがっている、≪ガルドラ龍神伝≫の真実。


それは、こういうものだった。――
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