ガルドラ龍神伝―闇龍編―
4


風龍戦士として目覚めたが、ビオラは自覚がなかった。


それどころか、彼女は神殿から出る前よりも表情が暗くなっているように、三人には見えた。


(やっぱり、さっきのことをまだ気にしてるんだ。そうだよね……。


そう簡単には、忘れられないよね)


ナンシーにとって、先程のことを気にしすぎているとしか思えないほど、ビオラの顔は沈んでいるように見えるのだ。


重い沈黙が続くなか、四人は急な依頼から戻ってきた。


「リタ殿。あなた方がご無事で何よりです。


おや、ビオラ様、暗い顔されてどうかなされたのですか?」


召使いの一人が、ビオラを心配する。


彼女は慌てて、笑顔で誤魔化し、首を横に振る。


「そうですか……。それなら良いです」


召使いは、安堵の胸を撫で下ろした。


(ビオラはああやって誤魔化してるけど、本当は風龍女神が言ったことには、もう気づいてるんじゃないかな?)


ヨゼフは召使いの態度などを見て、すぐにそう思った。


ビオラは自分の母親であるエアロビ族長に対して、どのように質問をすれば良いか、悩んでいた。


「ビオラ、ここは勇気を持って聞くしかないよ。


思い切って質問して、相手に話してもらうことで、すっきりすることもある」


ヨゼフは空気を読まずに、ビオラに自分の考えを言った。


彼の意見には、三人とも白けている。


「ヨゼフ、これはそんなに簡単な問題じゃないんだよ。


下手に言えば、ビオラ自身を傷つけることにもなる訳だし。


さっき、君はそういう風に言っただろう?」


「リタの言う通りよ。


あのことについて触れるかどうかは、ビオラが決めること。


私達は、黙って見守るしかないの」


リタもナンシーも、珍しくさっぱりとした言い方をする。


四人は大きな扉を開け、エアロビ族長との面会を始める。
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