ガルドラ龍神伝―闇龍編―
ナンシーは、砂龍族の風習を思い出していた。


彼女がぼんやりとしていると、ニアロスが屋敷のドアを叩く音がした。


彼女はその音で、我に返る。


ガチャ、という音と共に若そうな華龍族の女性が出てきた。


彼女の容姿はとても若々しく、服装も清潔感がある。


茶色の鬣を揺らしながら、女性は四人に話しかける。


「ようこそ、マライテスへ。私はカリア。


華龍族の族長よ」


カリアという族長は、怒ったことがないかのように、穏やかである。


「はじめまして、砂龍族のリタです。


気づいている魔族も多いかもしれませんが、私はフィブラスの――」


リタが身分を迂闊に明かしかけた時、ヨゼフとナンシーが慌てて、彼女の口を塞ぐ。


「駄目よ、リタ」


「あれは、僕達だけの秘密だろう?」


二人に注意され、リタは彼らの手を振り払う。


「まだ、あの秘密を隠してるの?


既に知ってる魔族もいるんだし、もう良いじゃないか」


リタは、まだ苦しそうにしている。


(確かにそうかもしれない。


だけど、これはランディー陛下のことよりも、あんたのことを思ってのことなんだよ。


あんたの身に、何かあるといけないから……)


ヨゼフは、酷くリタのことを心配している。


カリア族長は、先程のヨゼフの行動を見て、不思議そうな顔をする。


「あの、何かあったの?」


カリア族長に訪ねられ、三人は適当に誤魔化した。


族長は、尚も首を傾げる。


一分が経過した頃、四人はカリア族長の屋敷に入った。


リタは辺りを見回し、屋敷内の飾りを見ている。


女王の部屋のように豪華な家具に、ドレッサー。


そして天井から下がっているシャンデリアが、族長の屋敷というより、誰かの城の一室という雰囲気を醸し出している。
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