ガルドラ龍神伝―闇龍編―
リタは五歳の頃に、ジオに耳にたこができるまで言われたことを振り返っていた。


マライテスから十三メートル歩くと、四人の目の前にたくさんの茨が現れた。


その茨は生きているように、ぐにゃぐにゃと動いている。


それを見て、ナンシーの顔が一気に青ざめた。


「リタ、流石のあなたもここは、通りたくないよね?」


「ああ。でも、神殿に行くにはこの道しかないようだし、服は多少破れる覚悟で行かないとね」


「え! そんな……」


ナンシーは、リタの発言にショックを受ける。


腹を決めて四人は、鋭い棘を剥き出している茨の聖域を潜る。


棘が四人のジーパンに深く食い込むように、足に突き刺さる。


それは、リタ達のような冒険者が神殿に入るのを、妨害しているように見える。


棘が原因でできる傷の痛みを堪えながら、リタ達はひたすら東へ東へと進む。


「痛い……。ひりひりするよ」


「もう、情けないわね、ヨゼフは。


男なんだから、少しは我慢しなさいよ」


ナンシーは、呆れたように言った。


彼女の≪男なんだから≫という言葉に、ニアロスは目を丸くする。


「え! ヨゼフって、男だったの?


僕はてっきり、女かと。


背が低いし、鬣が長いから」


ニアロスの発言に、ヨゼフはぶるぶると震えている。


(おそらく、『背が低い』や『男に見えない』といった感じの言い方は、彼には気に障るんだろう。


でも、ニアロスとは出会ったばかりだし、そう言うのも無理はないよね……)


リタはヨゼフの怒りの原因について、考えた。


「悪かったな、チビで。


今度それを言ったら、本気で怒るぞ」


ニアロスのうっかり発言を、ヨゼフは鵜呑みにしてしまう。
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