ガルドラ龍神伝―闇龍編―
石盤に書かれている≪毒の魔物≫という言葉に疑問を感じながらも、ヨゼフは簡単に古代文字を解読した。


「凄いな。よくこんな混乱しやすい文字を、読めるね」


ニアロスは感心した。


ヨゼフは顔を赤らめながら、首を横に振る。


「僕なんて、まだまだだよ。


古代文字には、それぞれ読み方に法則があるらしいけどね」


無駄話をしている暇はないと言いたげに、四人は話を切る。


リタとナンシーは石盤から右側の二つのドアを、ヨゼフとニアロスは石盤から左側の二つのドアを開けた。


四人は手分けして、石盤にある≪毒の魔物≫を退治することにしたのだ。


リタが入った部屋は、漆黒といっても過言ではないほど暗い所だった。


それにも怯まず、彼女は≪毒の魔物≫の在処を探して、ひたすら走る。


その気持ちに応えるように、リタの武器である≪デュラック・クロー≫という爪は白く光る。


その光は、リタを魔物の元へ導こうとしているように見える。


奥へ進めば進むほど、リタの気分は悪くなっていく。


(う……。なんだろう、この臭い匂いは?


この奥に、例の魔物がいるってことなのか?)


リタは警戒しながら爪を構え、いつでも戦える体勢に入る。


爪から出る光を頼りに、広間らしき場所を見回す。


その時、走っているような素早い足音が、リタの耳に入った。


リタは魔物の気配を感じ取り、ジャンプして引っ掻くように攻撃した。


だが、あまりにも彼女の動きが大きいせいか、魔物は軽く攻撃を避ける。


(なんて素早い……。


まるで、レザンドニウムの闘技場で戦った、≪闇の大蜘蛛≫そっくりだ)


リタは以前飽きるくらいに戦わされてきた、≪闇の大蜘蛛≫という魔物のことを思い出す。


動きが素早く、毒性の強い蜘蛛。――


この特徴と、今戦っている魔物とを当て嵌め、リタは何かに気づく。


まさか、あの石盤に記されている≪毒の魔物≫って、≪闇の大蜘蛛≫のことなのか?


いや、それは有り得ない。


あれは、私達が領国を脱出した日に、倒したはず。――


リタは事実に気づいた時、信じられないという顔をした。


(一体だけでも手こずるのに、キアはこの神殿にも毒を仕込んでたのか)


きっと、マライテスの花園が荒廃したのはこいつらが原因に違いない、と思いながらリタは、闇の大蜘蛛と戦っている。
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