ガルドラ龍神伝―闇龍編―
4


ウィスパーとの戦いが始まって早々、ナンシーは斧を地面に叩きつける。


「バイル・グオリテス(火龍神の怒り)!」


ナンシーが呪文の名前を叫ぶと、地割れが起きるかのように地面が割れ、その隙間から灼熱の炎が噴き出した。


ウィスパーは、火山のような光景を目の当りにして怯んでいる。


「やるな、ナンシー。


僕も負けてられない」


似たような境遇を背負っている者同士が、競争するようにウィスパーに攻撃を仕掛ける。


「ブルー・ボール(水を取り巻く玉)!」


ヨゼフが水属性の呪文の名前を叫ぶと、槍先から泡のようなものが出てきて、ウィスパーに命中した。


ウィスパーの服は、びしょ濡れになった。


「よくも、あたしを嘗めてくれたわね……」


ウィスパーの怒りは、頂点に達している。


(やれやれ……。


あの二人は、すぐ調子に乗るんだから)


リタは呆れて物が言えなかった。


「クロス・ヒャッカンタフ(交差する砂の爪)!」


リタが右手に装備している爪の閃光が、ウィスパーが繰り出す魔法の花弁をかき消し、顔を傷つけた。


「自惚れの強い魔族には、丁度それくらいがお似合いさ」


陰に隠れていたニアロスは調子に乗り、ウィスパーをからかう。


ウィスパーは怒る気力もなくしたかのように、ニアロスには近づこうとはしなかった。


だが、遠距離から花弁を散らし、ニアロスに攻撃を仕掛けようとする。


「ニアロス、危ない! 早く逃げろ!」


ヨゼフは必死に叫ぶ。


だが、ニアロスは決して逃げようとはしなかった。
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