ガルドラ龍神伝―闇龍編―
それどころか、彼は突然、薄気味悪い笑みを浮かべた。


(なんだ、あの笑みは?


余裕ぶってるようにしか見えないけど)


そう思いつつ三人は、ニアロスが次に何をするのかを予想してみた。


ニアロスは両腕を高く掲げ、魔力を集中させた。


「フラワー・アトール(華龍女神の怒り)!」


ニアロスの両手から、凄まじいエネルギーが放たれた。


ウィスパーは降参すると言いたげに、神殿を去った。


凄まじい威力の魔法を使ったせいか、ニアロスは疲れている。


三人はぽかんとしていて、何も言えなかった。


(あれだけのエネルギーを……。


あんな魔法を、どこで覚えたんだろう)


三人は先程のニアロスの意外な活躍に、ただ凄いとしか言いようがなかった。


「僕は大丈夫さ。


それよりも、早くサートアンヌの華を探そう」


ニアロスはすっと立ち上がり、辺りをうろうろする。


だが、どこにもサートアンヌらしき紅色の華は見当たらない。


それでも、ニアロスは諦めなかった。


その意志に応えるように、祭壇付近で緑色の光が放たれた。


四人は気になり、光源である華龍女神セルランの祭壇に向かう。


実際に光っていたのは、巨大な龍神像だった。


茨のように鋭い棘を持った鱗が、敵を威嚇しているように見える。


ふと、ニアロスは、石像の下にある紅色の華を見つけた。


(これだ、これこそがサートアンヌに違いない)


可愛らしい紅色の華を見て、ニアロスはそう判断した。


彼はその華を、一輪摘み取った。


その時、リタ達の目の前で、石像の目が緑色に光った。


石像から女性らしい声が、ニアロスに語りかける。


『あなたはニアロスですね?


荒廃した花園を元に戻すために、その華を手に入れた。そうでしょう?』


「はい、セルラン女神様。でも、僕達はこの神殿を荒らしてしまいました。


それは、罪ではないのですか?」


ニアロスはいつもとは違い、真面目な態度で女神に謝罪する。


その考えを悟ってか、華龍女神はニアロスに意見した。


『それはあの魔道師が来たから、そこの火龍族の少女と水龍族の少年がしたこと。


それもわざとではなく、魔道師を追い払おうとしてしたこと。


罪は一切ありません』


華龍女神は、ヨゼフとナンシーの行動が間違いではない、と弁護した。
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