ガルドラ龍神伝―闇龍編―
2


船内で一夜を沸かし、体調管理や身だしなみを万全にして、三人は船から降りる。


彼女達が降りたグロッディオスという名の島は、暗黒に包まれている雰囲気を醸し出している。


彼女達が立っている位置から目と鼻の先にある≪ゲルデナの街≫は、まるで街全体を飲み込もうとしているかのように赤い雲が、上空で渦巻いている。


それを見て、三人はぞくっとした。


(こんなところで、怯んではいけない。


もし、ここで弱音を吐いて立ち止まってしまえば、キア達の思うつぼだ)


リタは自分に言い聞かせ、次に他の二人にも同じことを言い聞かせた。


三人の中にも、ようやく冒険者の風格や心構えが身についてきているようだ。


新たな試練と謎を求め、リタ達は西へ西へと進む。


ゲルデナ付近まで来ると、雷が落ちる直前のような音が近くなっていく。


三人は気になって、上空を見る。


そこには、先程遠くから見た赤い雲が、電気を放とうとしていた。


「薄気味悪いね。


まるで、何かを飲み込もうとしてるみたいだ」


ヨゼフは身震いして言った。


それに対して、リタは自分が予想していることを、他の二人に言った。


「これはあくまで私の予想だけど、とてもキアがしてることのようには思えない」


「なぜ、そう言えるの?」


ナンシーが訪ねた。


リタは続けて言う。


「私達が奴隷だった頃を思い出して。


キアの配下の魔道師達はみんな、『領主様は九年前まで、寛大でとても優しかった』って言ってたよね?」


「それが?」


「つまり、キアは本音では魔界の支配を望んでないってことさ。


きっと、メアリーが言ったように、≪暗黒のように黒い石≫が全ての発端なんだと思う」
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