ガルドラ龍神伝―闇龍編―
曖昧ではあったが、リタは自分の考えを言い切った。


ヨゼフやナンシーにも、それには頷ける部分がある。


以前は優しかったレザンドニウム領主が、いきなり自分の闇の魔力を利用して、≪魔界ガルドラ≫の支配を暗躍するはずがない。


僕達は家族を失ったり、誘拐された怒りで、領主を憎みすぎていたのかもしれない。


(リタの言うことは本当かもしれない。


でも、そのことを、誰が領主の配下達に言えるのか……。


今、彼女が言ったことは筋が通ってるし、矛盾も生じてないけど……)


親友である王女の話を聴いても、ヨゼフはまだ完全に信じることはできなかった。


半信半疑のまま三人は、ゲルデナの街の門を潜っていた。


この街には、ランデス村やマライテス町のように、門番となる魔族がいない。


だが、その代わりに、神殿前の警備は厳しくなっているだろう。


特に今は、十属性の龍魔族と十一属性の魔道族とが対立している最中にあるため、そういうことがあっても不思議ではない。


少なくとも、リタはそう思っていた。


三人は大急ぎで、街の中に入る。


だが、目的地に着いた途端に、例の妙な雷雲はうっすらと消えていた。


三人は首を傾げる。


彼女達が立ち止まっていると、向こう側から雷模様が入った黒い服を着た龍魔族の少年が現れた。


黄色の体や雷模様のように曲がった角などを見る限り、彼もこの街に住む雷龍族ということがわかる。


少年は半ば馴れ馴れしく、活気のある声で、リタ達に挨拶する。


「はじめまして、俺はペレデイス。


雷龍族の一人さ」


ペレデイスと名乗る少年は、地面に丸太を置くと、まるで丁度修行をしたかったとでもいうように、いとも簡単にチョップでそれを割る。


丸太は斧を使ったように、真っ二つに割れている。


その様子を見ていた三人は、ただ目を丸くするばかりだった。


「凄い。戦士でもないのに、どうやってこんな力を……」


「いや、俺はただ毎日修行してるだけさ。


大したことはないよ」


ナンシーに煽てられ、ペレデイスははにかんだ。


ふと、ペレデイスははっとして、黄緑色の広告のような紙を、三人に見せた。


その紙には、リタ達龍戦士ともう二人の龍魔族の顔が、指名手配の写真として貼られている。


更にそれぞれの顔の下には、賭けられている賞金の額が書かれている。


(何だよ、これ。


しかも、僕達やヒアの額が……一、十、百、千、万……きゅ、九百万ガルドンだと?


キアはやっぱり、腐ってる!)


これでは、確実に僕達は奴らの賞金首にされてしまう、とヨゼフは思った。


一方で、三人は不明な点があることに気づいた。
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