ガルドラ龍神伝―闇龍編―
3


赤い雲に覆われていたというだけあって、神殿の中は闇に包まれている。


リタは鞄から懐中電灯を取り出し、辺り一面を照らしながら進む。


その途中、極小さな声だったが、獣の悲鳴のようなものが聞こえた。


そのわりに、爪や頭などで何かを破壊するような音だけは、大きかった。


それを合図に、リタは奥まで走っていく。


(ヨゼフ達は無事かな?


何事もなく、四人で帰還できると良いんだけど)


リタは何度も同じ心配しながら、声のする方向に向かう。


その時、彼女の目の前に緑の縁取りの黒い扉が現れた。


その扉の貼り紙には、岩龍女神シトラルの神殿の時と同じように、≪古代ガルドラ文字≫が彫られている。


貼り紙に並べられている文字を見て、リタは動揺した。


彼女は肩で呼吸をしながら、それらを確認するように辿る。


(この古代文字、氷龍神の神殿の時よりも難しい。


まるで、一字一字がごちゃ混ぜになって並んでるみたいだ。


こんな時、ヨゼフがいてくれれば……)


不得意な物に出会わし、リタは弱音を吐いた。


その時、リタの後ろ姿が見えたのか、先程彼女が通った方の道からヨゼフが現れた。


「リタ! 無事だったんだね」


ヨゼフが、まるで久々に友と再会したかのように言った。


彼が来て早々、リタは頼み事をする。


「今、私一人だけでこの貼り紙の古代文字を解読しようとしたんだけど、複雑でよくわからないんだ。


そこで、君にこの古代文字の解読をお願いしたいんだけど」


リタは先程見た貼り紙を指差して、言った。


ヨゼフは言われた通りに、それを見た。


難しそうな顔をして、彼が言う。


「確かに、これは難しいね。


ちょっと時間がかかるだろうけど、やってみるよ」
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