ガルドラ龍神伝―闇龍編―
家に入ると、絵具とパレット、そして画面いっぱいに色が塗られたキャンパスを揃えた男性が、椅子に腰掛けている姿が見えた。


「お帰り、ペレデイス。


おや、その子達は?」


男性はリタ達を指差して、言った。


「ああ、紹介するよ。


左にいるのがリタ、真ん中にいるのがナンシー、そして右にいるのがヨゼフ」


ペレデイスの紹介に続いて、三人は軽くお辞儀をする。


ペレデイスが、簡単に事情を説明する。


「今日は、我が家に泊まるらしい。


それと、父さんに話しておきたいことがあるんだけど、後で良いかな?」


≪話しておきたいこと≫という言葉に反応するように、ペレデイスの父は急に顔を曇らせる。


それはまるで、「話したいことがあるなら、今ここで、ちゃんと言いなさい」とでも言いたげな表情だ。


その表情に、四人は怯んだ。


どことなく近寄れない空気が、部屋中に流れ込む。


父親はリタ達を巻き込まないよう、先に部屋に行ってなさい、と言った。


リビングには、ペレデイスと両親の三人だけになった。


彼らは、しばらく黙り込んだ。


だが、その沈黙を、ペレデイスが先に破った。


「父さん、俺は明日からリタ達と一緒に出る。


彼女達の役に立てるかは、わからないけど……」


戸惑いながらではあったが、ペレデイスは自分の気持ちを親に伝えることができた。


父親はペレデイスの方をまっすぐ向き、宥めるような眼差しで彼を見つめる。


その様子を、リタ達は二階からこっそりと覗き込む。


(ペレデイスが、私達と一緒に?


どういう心境の変化だろう?)


リタはわからないなりに、雷龍親子の会話を盗み聞きしている。


その時、三人は驚異的な言葉を耳にした。


「ペレデイス……。


お前が、新たな雷龍戦士に選ばれたことは、わかってた。


玄関にいた時、鎖鎌がちらっと見えたからな」
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