ガルドラ龍神伝―闇龍編―
ヨゼフが注意するように言った。


それに対して、スーザンははにかみながら、クスッと笑う。


「へへ、それもそうね。


じゃあ、まずは族長であるオルファニス様の家から案内するね」


そう言って、スーザンは四人をメルディーンに案内する。


彼女達が族長の家に向かって歩いている途中、パーリーがリタの肩を指でつついた。


「どうしたの、パーリー?」


にやにやとしているパーリーを見て、リタは訪ねた。


「実はね……」


そう言うと、パーリーはリタの耳元で囁く。


彼女の話によれば、スーザンは≪オルファニス≫という金龍族の族長の姪なのだという。


それを聞いてリタは一瞬、目を丸くした。


だが、その時の表情の雰囲気から、彼女は内心では驚いていない、という風にパーリーにはとれた。


(それが事実だとしても、私は驚かない。


私も、砂龍族の王の一人娘だし。


それに、この町に来た本来の目的は、族長の姪がどうとかではなく、≪最後の龍戦士≫を捜すことだ)


リタは、今回の旅の目的を、忘れはしなかった。


パーリーは不満げな顔をした。


しばらく歩くと、目の前にしっかりとした構造の家が一軒見えた。


それは家というより、一種の屋敷に見える。


黒く高い柵のような戸に、広々とした庭。


それらの風景は、貴族が三人か四人住んでいるかのような雰囲気を醸し出している。


だが、実際は族長夫妻とその子供、彼らに仕える召使いやメイド達が暮らしているだけだと、スーザンは細かく説明した。


六人がしばらく家を眺めていると、四十代後半くらいと思われる金龍族の男性が、少年を連れて戻ってきた。


「お帰り、伯父様。


相変わらずそのつんつんヘアー、直ってないわね」


スーザンは男性のことを≪伯父様≫と呼び、彼の角のようにはねている茶色の鬣を指摘する。


本人は全く気にせず、親しげに「今日は来客が多いな」と言った。


彼に対して、リタはお辞儀して自己紹介をした。


「私は砂龍族のリタと言います。


こちらは仲間の水龍族のヨゼフ、火龍族のナンシー、雷龍族のペレデイスです」


リタが簡単な紹介を済ますと、今度は男性と少年がお辞儀した。
< 187 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop