ガルドラ龍神伝―闇龍編―
アイルは怒るように言った。


それに対し、ヨゼフは更に感情を剥き出しにして言う。


「でも、僕達三人が行かなきゃ、ランディー陛下は死んでしまう。


それでも良いのか?」


「……」


アイルは黙り込んだまま、首を横に振る。


ヨゼフの怒りは、まだ続く。


「良くないだろう?


普通に考えろよ。家族が亡くなるのは、どの魔族にとっても最も悲しいことだ。


だからこそ――ランディー陛下はリタを残して死にたくないから、意識がなくても生死の境を彷徨いながら、必死に頑張って耐えてる。


それに応えるために、今僕はリタやナンシーと一緒に行動を起こそうとしてるんだよ」


ヨゼフが言ったことに対し、リタは動揺を隠せなかった。


彼らの声に反応してか、ランディー王が意識を一瞬だけ取り戻したかのように、リタの手を握る。


「行きなさい、リタ……。


私なら、大丈夫だ……。


かな……らず……仙人掌を……持って帰って……来るのだぞ……」


ランディー王は、途切れ途切れに自分の気持ちをリタ達に伝えた。


リタは囁くように言う。


「父上、無理して喋らないで下さい。


毒が全身に回ります。


ここは、私達に任せて下さい」


リタの言葉に安心感を抱いているのか、ランディー王は落ち着いている様子だった。


三人は他の龍戦士達に後の看病を任せ、セルセインの案内で≪薬仙人掌≫がある場所に向かう。


それを、乳母のジオが、祈るように見送る。


(殿下、どうかご無事で……。


≪フィブラスの流砂≫は、流砂と砂地獄が多い場所ですから)


そう思うと、ジオの胸は張り裂けそうになるのだった。
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