ガルドラ龍神伝―闇龍編―
(とうとう見つけた。


これを持ち帰って医師に薬を作ってもらえば、父上の毒は消えるはず)


そう思いながらリタは、仙人掌を裏側から見てみた。


その仙人掌は、裏側が紫色になっている。


(間違いない。


これが私の幼少時代に服用した、あの薬仙人掌だ)


リタは三本の仙人掌を見て、確信した。


「ナンシー、その斧で仙人掌の腕を切り落としてくれる?」


「任せて」


ナンシーは斧で仙人掌に傷をつけ、力いっぱいに採ろうとするが、それは歯を食い縛らなければならないほどに固かった。


あまりにも固いので、ナンシーはリタとヨゼフの力を借りることにした。


今度は三人で一緒に、仙人掌の腕を採ろうと試みる。


すると今度は、仙人掌の腕がザン、という音と共に砂の中に落ちた。


三人は疲れて、砂に膝を置く。


少しして彼女達は立ち上がり、仙人掌を持ち帰ろうと、リタのバッグにそれを入れた。


その時、酷い砂嵐と共に現れる人影が、彼女達の目に映る。


その人影の正体は、水系魔道師リゲリオンだった。


「また会ったな。


また、領国に来てもらうぞ、元奴隷達よ」


リゲリオンはリタ達に再会して早々、呼びかけるように言った。


「その話は何度も断ったはずだ。


良い加減に、諦めたらどうだい?」


リタは頑固に、リゲリオンの話を断る。


それにも関わらず、リゲリオンは高い声を張り上げて笑う。


「ひっかかったな?


今のは冗談だ。


でも、これから話すのは、本当のことだ。


実は……」


そう言いかけてリゲリオンは、言葉を詰まらせる。


その時の彼は、なぜか涙を流していた。


リタはその理由を聞こうとした。


「リタ、そんな奴の言うことなんか聞かなくて良いぜ。


どうせ冗談だし。


それに、今はランディー陛下のために、解毒剤を作ることが先だ」


ヨゼフは苛々として言った。


リタはリゲリオンの様子を見て、ヨゼフの苛立ちを制止した。


リゲリオンは、涙ながらに話す。


「実はメアリー――俺の姉が、キアに囚われた。


処刑されるのも、時間の問題だ。


俺は……俺はわかってたんだ。


あれはキア――俺達の親父じゃない。


あれは、闇龍アルエスだってことを」
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