ガルドラ龍神伝―闇龍編―
三人は石の扉に入った。


その先は、石段をずっと降りていかなければならない。


三人は武器の装備もしていない、いわば手ぶらの状態で、砂龍神の所に行こうとしている。


それは、極めて困難なことだ。


が、彼女達は困難や危険を一切顧みることなく、神殿内を冒険している。


三十メートルくらいの石段を下り終えた彼女達を待ち受けていたのは、巨大な砂龍神像と十本の発煙筒だった。


(砂龍神像を動かすだけならまだしも、なぜ十本も発煙筒があるんだ?)


リタは心底、神殿の中にしては間抜けな仕掛けだなぁ、と思った。


「この壁に何か、絵や文字が彫ってあるよ」


先に壁の彫刻の存在に気づいたのは、ヨゼフだった。


彼は早速、それを解読する。


(凄いな、ヨゼフ。流石はレザンドニウムの奴隷部屋で、古代文字の勉強をしてただけのことはあるね。私も彼を見習おうかな)


リタは感心した。


その間も、ヨゼフはすらすらと文字を読み上げていく。


その壁に彫られている文字が示す内容は、以下の通りだ。


『偉大なる砂龍神に会いたくば、全ての発煙筒に砂をかけるべし。さすれば、神の戸を開けん』


(『全ての発煙筒に砂をかけるべし』? 確かに私は砂龍族だから、砂煙を巻き起こすこともできるけど、まだ上手に制御することは難しいよ)


リタは困惑した。


が、仲間達が支えてくれると信じ、彼女は拳を握り締める。


そして、十本の発煙筒に囲まれながら、砂煙ごと回転し始めた。


(頑張って、リタ。あなたなら、絶対にこの仕掛けを攻略できる)


ナンシーは祈った。


が、リタの魔力は父王ほど強くはない。


それゆえ、体力の消費も大きい。


彼女はばて気味だった。


(! 目眩がしてきた。だけど、私は絶対に諦めない。諦めたら、そこで終わりじゃないか)


リタは歯を食いしばり、砂煙を広げる。


全部の発煙筒に、砂をかけることに成功した。


「よく頑張ったわね、リタ」


「今日のあんたを見て、恰好良いと思ったよ」


ヨゼフ達が駆け寄り、リタを褒めた。
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