ガルドラ龍神伝―闇龍編―
2


「ランディー陛下、リタ殿下から伝言を預かっております」


唐突にランディー王に申し出たのは、リタの乳母ジオだった。


「これ、ジオ。少し落ち着いて、ゆっくり喋りなさい」


王は宥めるように制止した。


彼は玉座で肩を叩きながら、先程ジオが言ったことについて質問する。


ジオは答えた。


「殿下及びお仲間達を、神殿入り口付近までお見送りした時に預かった伝言です。『心配しないでほしい』とのことです」


(そう言っている時が、一番心配なのだが)


「そうか。あの子はレイアに似て優しいから、私達に心配をかけたくないと思ってのことだろう。そこは理解してあげなくては」


リタが生まれて間もない頃に、病で亡くした王妃のことを思い出しながら、王は言った。


ふと、ジオは気にしている点を王に話す。


その点とは、リタや他の二人がなぜ本来の龍の姿ではなく、魔道族のような姿なのかということだ。


話を聞いた途端、急に王の表情が険しくなる。


「これは推測だが、あの子達の“魔道族のような姿”は、キアの呪いによるものだろう」


「はぁ……。と、仰いますと?」


「あの子達との面会中に、ふと思い出したのだが……。噂では、レザンドニウムの領主キアは、凄まじいほどの闇の魔力を手中にしているらしい。その魔力だけでなく、彼は呪術をも体得している。あくまでも国民達の噂でしかないが。多分、あの子達もそれにかかったために、あの姿になったのだろうと思う」


王は、他の砂龍達にはわからないような説明をした。


仮に彼らに知れると、要らぬ不安を与えるだけだ、と考えてのことだろう。


ジオは、王との面会を済ませた。


その後で彼女は窓際まで行き、密かに手を合わせる。


リタ達が無事に神殿から戻れるように、祈っているのだ。――
< 30 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop