ガルドラ龍神伝―闇龍編―
が、ナンシーは彼の発言を、否定しなかった。
むしろ、その無神経な言葉の裏には、僅かながら優しい気持ちも含まれているのだ、と彼女は思った。
「ヨゼフ……。あなたも、辛い過去を背負ってるんだよね。私がレザンドニウムの奴隷として魔道族に連れて行かれる前、両親が体を張って守ってくれたの。だけど、“我々魔道族に逆らう者は、キア様に逆らう者だ”と言って、彼らは両親を殺害し、私を一族から引き離した」
ナンシーは冷静に自らが味わった辛い過去を、ヨゼフに話した。
彼は話を聴きながら、今自分がしてしまった発言について、深く反省した。
「ごめん、ナンシー。あんたにもそんな過去があったなんて、知らなかった。僕は少しだけ砂龍城の王室が羨ましくなって……。ただそれだけなのさ」
「そうか。でも、いつまでも、暗い気持ちでは駄目。キアの思うつぼよ」
ナンシーの励ましにより、ヨゼフは元の明るい顔に戻った。
彼は礼を言った。
「ありがとう、ナンシー。おかげで元気が出た」
「どういたしまして」
二人は当たり障りのない会話をしながら、フィブラス国内で砂龍族の子供達と遊んだ。
一方、砂龍城の中では、ランディー王が玉座状の椅子に腰掛けながら、パーティの時間を心待ちにしている。
他には近衛兵達はもちろん、リタの乳母ジオや爺やのギルスも参列している。
「あなた様直々に、このようなパーティを計画なさるとは。陛下も意外と子煩悩な所をお持ちですのね」
静かに紅茶を啜っている横から、急にセルセインが妙な発言をしたので、王は吹き出してしまった。
(唐突に何を言い出すのだ、セルセイン。今回、私がこのパーティを計画したのは、リタが手紙で勧めてくれたからだ。あの子自身や砂龍族の民、二人の客人が満足してくれれば、それで良いのだ)
王はハンカチで口を拭きながら、このようなことを思っていた。――
(駄目だ。このままだと、パーティの挨拶に間に合わない)
むしろ、その無神経な言葉の裏には、僅かながら優しい気持ちも含まれているのだ、と彼女は思った。
「ヨゼフ……。あなたも、辛い過去を背負ってるんだよね。私がレザンドニウムの奴隷として魔道族に連れて行かれる前、両親が体を張って守ってくれたの。だけど、“我々魔道族に逆らう者は、キア様に逆らう者だ”と言って、彼らは両親を殺害し、私を一族から引き離した」
ナンシーは冷静に自らが味わった辛い過去を、ヨゼフに話した。
彼は話を聴きながら、今自分がしてしまった発言について、深く反省した。
「ごめん、ナンシー。あんたにもそんな過去があったなんて、知らなかった。僕は少しだけ砂龍城の王室が羨ましくなって……。ただそれだけなのさ」
「そうか。でも、いつまでも、暗い気持ちでは駄目。キアの思うつぼよ」
ナンシーの励ましにより、ヨゼフは元の明るい顔に戻った。
彼は礼を言った。
「ありがとう、ナンシー。おかげで元気が出た」
「どういたしまして」
二人は当たり障りのない会話をしながら、フィブラス国内で砂龍族の子供達と遊んだ。
一方、砂龍城の中では、ランディー王が玉座状の椅子に腰掛けながら、パーティの時間を心待ちにしている。
他には近衛兵達はもちろん、リタの乳母ジオや爺やのギルスも参列している。
「あなた様直々に、このようなパーティを計画なさるとは。陛下も意外と子煩悩な所をお持ちですのね」
静かに紅茶を啜っている横から、急にセルセインが妙な発言をしたので、王は吹き出してしまった。
(唐突に何を言い出すのだ、セルセイン。今回、私がこのパーティを計画したのは、リタが手紙で勧めてくれたからだ。あの子自身や砂龍族の民、二人の客人が満足してくれれば、それで良いのだ)
王はハンカチで口を拭きながら、このようなことを思っていた。――
(駄目だ。このままだと、パーティの挨拶に間に合わない)