ガルドラ龍神伝―闇龍編―
2


(私が父上に手紙を送り、パーティの開催を勧めたのは、明日からヨゼフ達と共に旅に出るということを国民に知らせるためだ。そう、これは運命なのだ。将来、この城を継いで女王になることも、≪セイント・ウェポン≫を砂龍神から授かり、戦士になることも。――これらは全て、運命が決めたことなのだ。今更後戻りはできない)


リタは兵士達の列の間を通りながら、ずっとそのようなことを考えていた。


前方で向い合せに立っている二人の近衛兵が、リタの顔を包んでいるベールをはずす。


その裏にはキアの呪術による仮の顔ではなく、色白で美しく、ざらついているのがほとんど目立たない龍の顔があった。


先程ランディー王達が驚いていたのは、彼女にかけられていた呪いが解け、元に戻っていたからに違いない。


セルセインは、リタの耳元で囁いた。


『殿下、挨拶が終わりましたら、一緒に化粧室に参りましょう』


『い、いきなりどうした、セルセイン?』


『お気づきになりませんか? 足元をご覧下さい』


『はあ? 足元?』


セルセインに促され、リタは足元を見る。


青色のドレスの下から、龍の足の爪が覗いていることに気づいたリタは、首を縦に振り、セルセインに答えた。


彼女はそのまま大きな扉を開け、国民達の前に出る。


そして、マイクを握った。


その時に見えた龍の手に、またしても彼女は驚かされた。


(こ、これはどうしたことか。手足が元に戻ってる。もしかして、亡き母上や砂龍神デュラックが助けてくれたおかげなのか?)


リタは呆然としていて、声も出ない。


が、同一族の大人達が「リタ殿下、しっかりして下さい!」と、一斉に叫びだした時、彼女は我に返った。


彼女は一礼をして、自ら決意したことを述べる。
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