ガルドラ龍神伝―闇龍編―
「この度、私が水龍と火龍を連れてこの砂漠に戻ったのは、皆様方に申し上げたいことがあるからです。


私達三人は九年間、レザンドニウム領国の魔道領主キアの奴隷として働かされていました。


彼は今、とても恐ろしい呪術を身につけていて、正直言いますと、私も怖いです。


が、いつまでも怯えていては、何も始まりません。


今こそ魔道族の者達と戦わなければならない時なのです。


明日、私は客人の水龍や火龍と共に、キア達と戦うための修行の旅に出ます。


以上」


リタが抱負を述べた後、周囲から割れるような拍手が送られてきた。


「リタ姫様、最高!」


「リタ殿下、恰好良い!」


「ランディー陛下、万歳!」


「リタ殿下、万歳!」


「フィブラス王国、万歳!」


周囲の大人達が、口々に叫ぶ。


ヨゼフやナンシーも、負けないくらいの声で叫ぶ。


(ヨゼフ、ナンシー……。それに、一族のみんな……)


(ありがとう。本当に、ありがとう)


リタは、一族の民や二人の他龍族民の声援を受け、涙を流す。


(リタ……。九年間の奴隷生活を経て、逞しく成長したな。


これもヨゼフ達のおかげだろう。


天界≪ソダクトル≫のレイア王妃も、お前のことを頼もしげに見守ってくれることだろう)


城の天井の方を見ながらランディー王は、娘を見守ってほしいと、亡き王妃に祈るのだった。――


リタによる旅立ち宣言が終わり、食事の時間が来た。


ヨゼフやナンシーは、奴隷部屋にいた時よりもたくさん食べられると思ったのか、大好物の海藻や肉を、ここぞとばかりに食べる。


「久しぶりに、故郷の産物である海藻類を食べることができて、幸せだよ」


「この肉、私の故郷スクルド町産ね。懐かしいわ」


二人が食べ物を頬張っている間、リタはセルセインに連れられて、女性兵士専用の化粧室の鏡を見ていた。


その鏡に映っているのは、父親似のダークブルーの鬣と真っ直ぐに伸びた角、五歳の頃よりも細長い顔、そして四枚の翼と青いリボンを巻いた尾が揃った姿だった。
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