ガルドラ龍神伝―闇龍編―
「凄い。本当に、元通りの砂龍の姿だ」


「おそらく殿下が砂龍神デュラックから授かった、≪セイント・ウェポン≫に込められている、聖なる力の効用ではないでしょうか?」


(そうか! 地下神殿であの爪を手にした時、癒されるようなオーラを感じたのも、そのためだったのか)


リタは近衛兵が立てた仮説を真に受けると、化粧室を出て、自分の部屋に向かう。


自分が幼い頃に部屋で読んだ、≪龍神と聖武器≫という題名の本を探すためだ。


彼女は部屋に入ると、早速その本を探し始める。


本棚には辞書や古い地図帳、この魔界の歴史等について解説した本など、様々な種類の本が、四段に分かれて入っている。


「殿下、何をしているのですか?」


「確かこの本棚に、≪セイント・ウェポン≫について解説した本があるはずだ」


リタはひたすら古文書を探す。


その中から、赤色の表紙で厚みのある本を見つけた。


ただそれは、大量の埃をかぶっているうえに、ページの所々に染みができている。


おそらくこの染みは、前の襲撃の時に起こった火災が原因でできたものだろう。


が、見方次第では、コーヒーが零れているかのようにも見える。


年数が経っているので、無理もないだろう。


それでも、リタは諦めなかった。


彼女はまず、埃を払い落とし、題名を確認した。


表紙には、≪龍神と聖武器≫と書かれている。


「これだ! 早速、調べてみよう」


リタは机に古文書を置き、幾つかページをめくる。


事実、五十ページ目から後はまだ誰も読んだことのない、いわば未知の情報だった。


≪神々の聖なる力を秘めた武器、これを≪セイント・ウェポン≫と言うなり。これらの武器を得し者達、つまり神々に選ばれし龍戦士達は、如何な願い事も必ず叶うと言われている――≫


古文書に記されている事柄は、幾分横道にそれている、とリタは思った。


が、確かにその通りかもしれないとも思った。


というのも、仮に砂龍神が願い事を叶える力を持っていなかったとすれば、自分自身の姿が元に戻ることはまずなかっただろう、と考えてのことだ。


答えが見つかり、ほっとしたリタは古文書を本棚に戻し、セルセインと一緒に城外に出る。
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