ガルドラ龍神伝―闇龍編―
(おかしいな。僕の家族は九年前、キアに殺されたはずだ。近くに、誰かが隠れてるのかな?)


疑問を頭に浮かべながらヨゼフは、ソファの周りを調べる。


「どこを見てるの、ヨゼフ? 僕はここだよ」


そう言いながら、ヨゼフを知っているような――いや、むしろ彼と親しいと思わしき少年が、ソファの後ろ側から現れた。


「お帰り、ヨゼフ」


「スーラル! 君だったのか。びっくりした……。九年ぶりだね。元気かい?」


「もちろん。ラノア族長も、君のことを待ってたんだよ」


「そうか……。族長はどこだい?」


ヨゼフの質問に答えるように、彼の部屋の方から、ピンクの鬣をした水龍族の女性が現れた。


その女性は緑色の洋服に身を包み、清楚な身なりをしている。


「お久しぶりですね、ヨゼフ。小柄な所は相変わらずですが……」


「一言多いです!」


女性にからかわれ、ヨゼフは反発した。


リタ達は首を傾げる。


「ヨゼフ、君はさっきから、この二人と親しげに話してるけど、この人達は誰だい?」


「ああ、紹介が遅れてごめんね。右側にいる女の人が、ラノア族長。左側にいる男の子が、幼馴染みのスーラル」


次にヨゼフは、族長とスーラルに、リタ達のことを紹介する。


「族長、紹介します。こちらは奴隷部屋にいた時からの友達で、リタとナンシーです」


「砂龍族のリタです」


「火龍族のナンシーです」


「え? “リタ”って……もしかしてあなたは、三十代砂龍王のご息女?」


「父をご存知なのですね? そうです、私は第三十代砂龍王ランディーの娘です」


リタは、大胆にかつ安直に身分を明かした。


後から、ヨゼフが注意する。


「リタ、駄目だよ。そんな簡単に身分を明かしたら……」


「どうして? ラノア族長は既に、私のことを少し知ってるんだよ」


「あんたに何かあったら、僕達の責任なんだから。まあ、今回は良いけど、今度から気をつけてね」


年下のヨゼフにがみがみ言われ、リタは乳母に説教されているような気分になった。


その時、リタの腹の音が鳴った。


三人はふと、時計を見やる。
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